この仕事を真面目に向き合えば向き合うほど、悲しくなることがあります。
それは、正しい表装(修繕・新調)を施していないご依頼品を拝見させていただく時です。

お客様への想い、作者への敬意、そして表装に対する愛情・・・職人として当然のことです。
それ以上に良いものを生み出そうとする心がプロフェッショナルだと自負しております。

今回は、昨日ご依頼いただいた悲しい現実をご紹介します。
DSC02221 (1)
4、5年前に古い額装(扁額)を額縁屋さんで手直ししてもらったそうですが、甚だしい処置が施されておりました。
建築物で言えば、欠陥住宅。医療で言えば、医療ミス。
4、5年前に傷を抱えたままの状態です。

①最低限の見栄えが悪い(作品を引き立てようとする配慮が全くない) ※天地の余白があり過ぎる。額縁の見付が太過ぎる。


DSC02225
②以前の扁額に張り込まれてあった作品を修繕することなく切りとって上に乗せただけの仕上げ。
③裏打ち剥し・剥落止め・異物除去作業の皆無、もちろん再裏打ちもしない悪質な処置。



DSC02227
④両面テープ(合成樹脂)で部分的に作品を止めてあるだけ。和紙の作品に合成樹脂を使用することは悪影響しかない!ご法度である!



DSC02218
⑤額下地が粗悪なべニアのパネル仕上げ。考えられません。最低です。通常は、障子の様な組子(格子)下地に和紙を張り重ねて仕上げたものを化粧していきます。
表装には、鑑賞と保存を考慮した素晴らしい技術があるにもかかわらず、作品の保存への配慮が欠落しています。



DSC02220
DSC02232
⑥額縁の留めがホッチキスと釘で処理してある。しかも留めには隙間がある。

以上ですが、話せば何時間でも語り続けられるくらい表具への熱い想いが込み上げますが、ぐっと押し堪えます。

今回ご依頼のあったお客様には、誠意をもって最善のお仕事をさせていただきますのでご安心ください。