カテゴリ: ◆表装ラボ◆
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般若心経
手漉きの和紙蝶番
刷毛
塵落としの引手
蛇の抜け殻

『 ん 』です。
脱皮したての蛇の抜け殻を見つけると運気(金運・子孫繁栄)が上がると言われています。
蛇は、身の安全を守るために目立たないところで脱皮するから何処で脱皮するか判らない為、とても貴重なことなのです。
ご依頼主は、その貴重な蛇の抜け殻を玄関で発見された強運の持ち主です。
基本的に額装にする場合は『 寿 』や『 一本筋 』にすることがほとんどですが、ご依頼主夫婦にとってひらがなの『 ん 』にとても縁があるということから、『 ん 』+『 縁⇒円⇒丸 』と意味を繋げて表装させていただきました。
※丸には魔除けの意味があるという説もあります

表装前の状態

※後ほど保護用としてアクリルガラスを嵌め込んでいます




蛇の抜け殻/額表装
ご依頼主/岐阜県
御所車
桐箱の箱書きを生かす

掛軸にとって桐箱(掛軸収納箱)は、お家の様な存在で、数百年前から掛軸と共存しています。
そして掛軸と同様に状態は悪くなっていきます。悪くなるを分かり易く言うと機能性が著しく低下するということです。
所謂、桐箱として一番大事な調湿性能が落ちる為、掛軸を守ってくれなくなるのです。これでは、修繕した掛軸を箱に収めても意味がありません。
しかしながら、古い桐箱には箱書き(題名)が付き物です。贔屓にさせて頂いている桐箱職人さんは、その箱書きを生かし、新しい桐箱の上蓋部分に寸分の狂いもなく嵌め込む技術を持っています。
密閉性の高い印籠タイプの桐箱は、掛軸を保存する上で最適なのです。

▲before

▲after

▲before

▲after

▲before

▲after
馬毛の裏漉し器
WORKS Vol.136(巻子表装)
千鳥張り
仕事納め

2019年最後のお客様は、静岡県からご来店のご夫婦。
2020年からご朱印軸(納経軸)で百観音霊場を始められるそうで、その前に掛軸を仕立てる職人さんに会って、話して、心の準備をしたかったとご主人。
色々とお話をしていくと、ご主人は何をするにも拘るお方で大切なご朱印軸を誰に預けるか決めてからスタートしたいと仰っていました。
ご主人は、「あなたに会えて巡礼へのモチベーションがグッと上がりました」「これで安心して巡礼が始められます」
仕事納めの日にとても嬉しいお言葉をいただき、心はホクホクです。
表具師としてこんなに有難い締めくくりはございません。
次回お会いできることを楽しみにしています。
満願目指して、どうぞお気を付けていってらっしゃいませ。
手仕事の在り方

この作業は、掛軸の軸先を取り付けるために軸棒を削っている様子です。
昔(20年位前まで)は、機械ではなくノコギリ・出刃包丁をメインに数種類の道具で手作業のみで行っていました。
ちなみに僕は根っからの職人気質ですが、『手作業のみで』とか『伝統技法』に拘りはありません。それよりもっと先にある『良い物』ができるのであれば、手段は択ばないと思いながら日々仕事をしています。
表具師の様に伝統ある職というものは、『旨味のある歌い文句』に流されがちですが、その技法を発案した当時の職人は、おそらく伝統技法になると思っていたわけではなく、ただ『良い物』を作りたかったに過ぎないと思います。
だから僕は、良い仕事をする為であれば、文明の利器は惜しみなく使います。
その中で、どうしても手仕事ではないと不可能なものもあります。
手仕事とは、手作業ではなく手でしか成し得ない技術だと思っています。
現代を生きる職人として、『古典』と『新しい』を深く追及していくことが大切なのではないかといつも考えています。

▲before(1ミリの段差を正確に削っています)

▲after(軸先を取り付けた状態です)
表装予約、好評です

お店のインターホンが鳴り、窓越しに車のナンバーを見ると『つくばナンバー』。
ん、、、えっ!茨城県!?
お出迎えしてびっくり、茨城県から突然のご来店で、「松月堂のホームページを見て気になっていたので寄ってみました」とご主人。
しかも、松月堂トップページに掲載の『事前のご来店予約』をご存じにも関わらず、アポなしでのご来店でした。ご主人は、「ふらっと寄って居たらご縁」と何とも粋なことを仰りました。
これまでにいくつもの霊場を巡られており、これから西国三十三ヶ所霊場を納経軸で始められるそうで、掛軸表装のことでご相談いただきました。また、関東八十八ヶ所霊場を満願されており、表装(仮)予約のご案内をすると早速、ご予約をいただきました。次回、ご来店の際に満願の納経軸(関東八十八ヶ所霊場)を持参されるとのことです。
【大切なお知らせ】 ⇐ クリック
表装(仮)予約とは、現在多くのご依頼を頂いており、表装納期は6ヶ月~となっておりますが、表装・修繕をご検討中の方におすすめしているサービスです。
いつでもキャンセルできる簡単なご予約で、詳しいご連絡先は必要なく、お名前(ご苗字)だけで大丈夫です。
メールかお電話でご連絡頂いた日付を仮予約とし、順番が来たら優先的に表装作業を進めていきます。
本当に簡単ですので、お気軽にお問い合わせくださいね。
「 Tao~人生の通過点~ 」

「現在」・「過去」・「未来」を書で表しています。
とても穏やかなお人柄で、非常に豊かな表現をされる書道家のはるさんの作品です。
僕の心はこの作品だけで虜になってしまいました。
来たる11月22日(金)~24日(日)まで、名古屋市東区にあるEnne_nittourenさんで自身初の個展をされるにあたって額装を松月堂でさせていただいております。出店数は、現時点でおよそ20点ほどの予定で、そのどれもが創造的で深い意味が詰まっており、何より書のデザイン性に圧倒されてしまう作品ばかりです。
ちなみに僕は、お世辞が嫌いな性格です。
そんな拘り気質の僕の仕事を書道家はるさんに深く理解していただけていることはとても光栄なことです。
はるさんの素敵な作品を多くの方にご覧いただけることを一ファンとして願っています。
是非、書の世界に触れてみてください。きっと楽しい世界が広がっていますよ。
※22日(金)は、はるさんの書道パフォーマンスもございます



詳しくは クリック→Enne_nittouren





衝立
腰張り

元々は、狭い茶室の空間で着物や帯が土壁に当たった際に、衣服・土壁を傷つけないようにするために設えたことがきっかけで、いつしか然るべき和室には、腰張りをすることがステータスになっていったように思います。
今では、和室のデザインとしても一目を置かれています。和室に腰張りがしてあると単純に格好良いと見とれてしまいます。
ちなみに腰張りは、表具師にしか出来ない仕事だと自負しています。
和紙、刷毛、ヘラと材料・道具はシンプルですが、土壁の具合と季節に合わせ、糊の濃度を調節しなければなりません。もちろん、張る和紙の寸法にも黄金比があり、それをもとに和室に適切な寸法で和紙を裁断し正確に張っていくのです。
『貼る』ではなく『張る』なのです。これは表具師特有の感覚です。
折れ伏せ作業

掛軸の修繕で行う折れ伏せ(処置)作業の風景です。
横折れや破れの甚だしい本紙(作品)を裏面から和紙で補強しているのです。折れた箇所全てに施すため、膨大な時間を要しますが、これを行うことにより損傷部分は改善され、作品を守ると同時に折れ目もなくなることで、作品本来の美しさを取り戻すことができます。

Instagramにて動画公開中!
↓ ↓
https://www.instagram.com/p/BxzvjoCDBms/
リノベーションと修繕
細部こそ拘る
小松宮彰仁親王の書

この写真は、ご依頼品を預かった際の状態です。
おそらくこの状態が改善されるイメージが湧かない人が大多数と思われます。
それとは裏腹に、僕には明確なイメージが湧いていました。
もちろん最善を尽くす為に、時間をかけて幾通りの修繕プランを用意します。そして、工程が進むごとに都度最良のプランを選び修繕しています。

本紙はバラバラかつ脆いので、取り扱いはとてもデリケートです。
既存のパーツ(本紙)は、全て生かします。



額装の土台にある本紙も下記写真の様に解体(取り外し)していきます。
非常に繊細な作業が続きます。


バラバラになっていたメインの本紙を元の配置へと仮合わせしています。
※後ほど一旦ばらし、修繕作業・補強作業を施したら裏打ちをします

修繕を終えた本紙は、この通り良好な状態へと変貌を遂げました。
元々欠損していた部分は、既存の本紙の色味の中で一番薄い色味よりもワントーン薄い色味で補紙しています。これは作為的に行ったのですが、話すと長くなりますので割愛します。





書:小松宮彰仁親王(日本赤十字社総裁)・額装修繕(修理修復)
ご依頼主:岐阜県