カテゴリ: ◆表装ラボ◆

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「過度に拘った、、伝統的な、、」ということではなく、自分にとってそれが自然で使い易いことが、
長く職人を続けていくコツのような気がします。

糊と桶と刷毛と私の相性も良い具合です。
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イボタロウムシから採取した動物性の蝋です。
軸装仕上げ(裏摺り)の際に、滑りを良くするために裏面全体に軽く擦り付けます。





破れ、欠損、虫食い、無数の折れとシワ…状態の甚だしい古文書である。

モノはいずれ朽ちていく。

その速度を抑える作用が修繕であると考えています。

この写真のbefore→afterは、決して蘇っているわけではなく、既存の可能性を高めているに過ぎない。

私は、その既存の未来を少しだけ変えてあげられる仕事をしているのかも知れない。DSC005340001
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ボリュームがあるので、二部構成にしています。
この住宅の素晴らしさは家の外にも溢れています。
とても丁寧に手入れされている庭を見て、大切なのは今も尚、暮らしがこの住宅にあることです。

ここに住まわれている川原田ご夫妻の家に対する愛情や日常が見えてくることが、建築を維持していく上で一番の栄養であると思うのです。
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先日、愛知県名古屋市にある『川原田家住宅』へ仕事の打ち合わせを兼ねて伺いました。

昭和12年に建築された二階建て木造建築で、至る所に職人の粋を感じられる豊かな住宅でした。

私は表具師なので、襖や障子を見ればその建築の質やポテンシャルもある程度、測ることが出来ます。
ポイントとしては、

・築年数に対しての建付けの良さと納め方
・襖や障子に使用されている材料と仕立ての良さ

何故かと言えば、建築において襖や障子はあまり意識の届かない部分であることが多く、そこに予算を掛けない傾向にあるからです。

しかしながら、名建築であれば逆にその細部にこそ意識を配る為、自ずとそれ以外の部分も相乗効果で、質の高い建築物になってくるのです。もちろん、職人の質も高いものが求められていきます。

この住宅は、正にそれである。

川原田家住宅主屋 文化遺産オンライン (nii.ac.jp)

オンラインあいたて博 川原田家住宅 - YouTube
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和紙を柿渋で染めました。
濃度を調節しながら、イメージする色味へと仕上げていきます。

柿渋染めの和紙は、見た目の美しさだけでなく、防腐・抗菌性や耐久性を高めてくれます。

作品を守ることが大前提の表具師としては、頼もしい味方です。DSC02438




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例えば、真の真(仏表装)という形式の掛軸は、15パーツの裂地や和紙で構成されています。

掛軸の仕事は、一度に8幅程度を同時進行する為、約120パーツを用意することになります。

採寸・取り合わせ・裏打ち・裁断・順番の整理といった準備作業には、とても時間が掛かります。

でもその準備時間こそ、高い精度が求められる作業に向けて、心を整える時間にもなっています。
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掛軸(本紙)の修繕工程の一コマ。

修理や修復という言葉ではなく、修繕(繕い直す)という言葉のニュアンスで作業をするように心掛けています。




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天地は、綿麻。
中廻しは、絹。

二段表具に使用する裂地です。
楮紙の和紙で、肌裏打ちをする段取りをしています。

天地と中廻しでは、裂の厚みが異なるので、裏打ち和紙の厚みも微妙に変えています。

そうする事で、均一の厚みが保たれたバランスの良い掛軸になります。




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古い軸先のクリーニング。
優に50年以上は経っているものです。

クリーニング後、本金鍍金を真新しく塗り替える手段もありますが、掛軸の主である本紙(作品)の経年変化(風合い)に合わせて、不自然にならない修繕をトータルで行うことを心掛けています。

汚れを丁寧に除去することで、職人の細やかな仕事が見えてきました。
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数年ぶりに工房の雪見障子を張り替え。
表具師なので、もちろん千鳥張りを施しました。千鳥張りはとても手間の掛かる作業の為、時間も通常の五倍ほどです。
使用した和紙は手漉きの本美濃紙で、陽を通す具合も本美濃紙ならではの優しく温かみのある調子です。

そして、今回は障子剥がしを息子が手伝ってくれました。
ゆっくりでもいいので丁寧に仕事をすることを教えました。
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良い顔と手付きしてます。笑
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総裏打ちに使用する刷毛です。
多いと思われるかもしれませんが、適材適所にこの七種の刷毛は必須になります。
私の年齢に近い刷毛も日々の手入れで、未だに現役で活躍してくれます。

さぁ、明日から年内最後の総裏打ちが始まります。
気合入れます。




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現在、屏風や額装の下地を黙々と製作中。
木工作業も表具師として重要な仕事の一つです。
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仏画の彩色部分(絵具)に膠液で剥落止めをしています。
古い日本画は絵具の定着が儚く脆いため、こうした地道な作業を部分毎に数日間掛けて行います。
ゆっくりじっくり本紙の状態を確かめながら修繕作業は始まっていくのです。




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裏打ちした本紙のシワやヨレを無くす為、そして本紙の状態をチェックしながら綺麗に仕事をする為、仮張りはとても大切な工程です。

これを双幅の軸装へ仕立てます。




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修繕費もご依頼主によって予算は様々です。
重要文化財等を専門に扱う機関であれば潤沢な修繕プランを立てることが可能ですが、一般的にはそうはいきません。
限られた予算の中で、然るべき修繕と表具をする事が私にできる事です。
どうぞ気軽な気持ちでご相談ください。
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書/墨蹟
形式/丸表具(横物)
軸先/サクラ材
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字の如く、三段になっていることからそう呼ばれています。
この表具形式を正式には行の行と言い、茶道・華道を嗜んでいる方なら馴染みがあるかと思います。

三種の裂地を扱いながら、本紙(作品)を引き立てる取り合わせ作業はとても悩みます。
対比・調和・繋がり…といった言葉を頭に浮かべながら導き出していきます。
今回は、古裂と金襴を取り合わせました。
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一文字や風帯に用いられる表具裂。
竹屋町は、金糸縫の一種で紗や羅などの薄物に平金糸や色糸で文様を縫ったものです。
十七世紀に京都の竹屋町の辺りで優れた紗が織られ、それに縫いをしたため、このような名称となったと言われています。
好きな表装裂の一つです。
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現代において、この言葉に相応しい人は少ないのかも知れない。

先日、表具の打合せをさせて頂いたご依頼主は正に数寄者である。

もう8,9年のお付き合いになります。とても物腰の柔らかいお方ですが、その拘りにはいつも感心させられます。

茶掛けが好きな理由は、見た目のバランスだと仰います。もちろん、書の意味やストーリーも熟知しておられますが、重要なのはビジュアル。

通りで話しが合うはずです。




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表に釘を見せない無双仕上げの屏風縁の留は、一発勝負。
良い仕上がりになりました。
初お披露目は、ご依頼主にとっておきます。DSC00132




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屏風に使用する縁の準備。
無垢の良さや経年変化をより楽しんでもらう為、敢えてコーティング処理をしていません。




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掛軸は大きな一枚ものではなく、プラモデルの様にパーツを継いて構成されています。

継ぎ目は、1分(約3㎜)です。94B82EF5-84C3-4F1C-B059-F95C548D05D1




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表具師は、帙(ケース)や貼り箱も仕立てます。

もちろん、ご依頼品を収納することを目的とした特注の場合に限りますが。

今回は、ご依頼主のオーダーに合わせて古裂を使用しました。

和紙・裂(布)・糊・糸で仕立てられるものは恐らくどんなものでも可能です。

例えば、和綴じ・御朱印帳も特別な時にだけ仕立てます。

全て表装技術が成せる技です。
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プラスチック製ではなく、骨
小鉤を使用しています。

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上蓋の裏は、金銀砂子紙で化粧しています。



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先日、久しぶりに糊桶を新調しました。

あまりの仕立ての良さに思わず何枚も写真を撮ってしまいました。

蓋のデザイン・小口の滑らかな仕上げ・シームレスと思ってしまう程のしっとりとした繋ぎ目・そして、ステンレス製のタガが全体を引き締めてくれている。

木桶は管理に少々手が掛かりますが、使っている感があって良い。

これから自分の手に馴染ませていくのが楽しみです。
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日本には古来から空間の境界として衝立がある。

もちろん表具には、襖や屏風といった間仕切り(境界)も存在するが、衝立は極めて結界に近い感覚が僕にはある。
衝立は襖や屏風と違い、空間を大きく遮ることはできない。
そこに居る互いの気遣いが不可欠で、双方の配慮によって衝立の役割は成立する。

美と心の共存である。

考えてみると、寺院、店や家の玄関にあるのはそういうことなのである。
外界と内界の境に存在する。

この古き良き日本の美を衝立は教えてくれている。
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少し突っ込んだ話をすると、和モダン・和テイストの様な軽はずみな造語に正しい和など無いと思っている。
和室という言葉にさえ疑問が残る。
和を正しく取り入れた空間もあまり見かけない。
畳があって床の間があって、掛軸や額が掛けてあれば和室なのだろうか、、、
いや違う、座敷という見方が正しい方向性であると思う。
和の様式・基本を知っていれば、打ちっ放しコンクリートの空間にも座敷を表現することは可能である。

一つ言えることは、正しい和の方向性を表具師は知っている。
申し上げたことは、あくまで洒落である。笑




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名古屋にある月日荘さん企画のもと製作した『短冊掛け』です。
裂地は表情豊かなカディコットンで、通常の短冊掛軸を再構築するように高さ・巾・糸巾・軸先のサイズ感を細かく見直しています。
全ては、短冊が自然に引き立てられるようにする為の仕立てであることが目的です。

短冊という小さなフォーマットで、書・絵画・アートを気軽に愉しんでみてください。

YouTubeでProduction video(製作動画)も公開しております。
クリック ⇒ 短冊掛軸 production video - YouTube


張る・撫でる・打つ・断つ・付ける・継ぐ・結ぶ


表具師の基本動作を映像に納めています。
手仕事でしか成し得ない技をご覧ください。


余談ですが、先日ある中学生の動きの所作を映像で拝見しました。
無駄のない動き、一点集中する瞬発力、次の初動への流れ、大の大人が心を打たれてしまいました。
彼の師からすれば、まだ発展途上ではあるのですが、僕にとっては動き(所作)を見つめ直す貴重なキッカケになりました。

無駄がないとは決して余白が無いというわけではなく、一瞬の間(余白)を大切にしようとする心が彼から感じられ、その部分に人となりが現れてくるのだと思います。

僕もそうなれるように精進せねば。
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Sサイズ・Mサイズ・Ⅼサイズで展開しています。
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こうして並べてみると、御菓子の様で美味しそう見えますが、陶器の軸先です。

軸先は掛軸の足元を印象付ける大事なパーツです。

陶器の軸先は、一つ一つバラつきがある為少し気を使いますが、表情に味があり見ていて飽きないです。
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古裂・新裂、素材は綿・麻・絹・その他様々です。

裂毎に一点一点、工夫しながら縮み矯正を掛けていきます。

そうする事で、裏打ちする際に変化が起こっても慌てず対処出来ます。

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書 華雪
短冊掛け

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於 月日荘
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ご依頼主のリクエストで急遽、一箇所だけ組子の間口を広げ通路を作りました。

組子の透かし襖だからこそ出来る手法です。

なんだかホッコリしてしまいます。C25431A9-D89D-42FF-876C-697AD769A137




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四曲半双の金屏風と黒屏風を製作しています。

一面/巾:尺五寸(45㎝)×高さ:二尺三寸(69㎝)と小ぶりで、ご依頼主のオーダーに合わせてのオリジナルサイズです。

四曲屏風は、二曲屏風と比べ色々な使い方が出来ます。




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見ているだけで楽しい。

この裂地(布)を使って短冊掛けを製作します。
布毎に特質があるので、一つ一つ工夫をしながら仕立てていくのも創作意欲が掻き立てられ、作り手としては良しです。
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裂地の縮み掛けの風景



 

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修繕に一年掛かりました。

①検品・調査・現状の撮影
②材料・その他費用の細かな見積り
③修繕プランの設計
④下準備
⑤屏風の解体・本紙の解体(剥がし)
⑥本紙の修繕作業
⑦屏風下地の製作
⑧修繕した本紙×12枚の張り込み
⑨屏風の化粧・装飾
⑩検品・梱包

技術的な部分を確実に発揮させる為には平常心が必要です。
様々な工程に合わせて、湿度・温度・時間帯を緻密に計算しながら精神を整える作業は、とても大変でした。しかしながら、緊張感の続く過程も貴重な体験であると意識することで一つ一つ課題を着実に乗り越えていく事が出来ました。

普段の何気ない準備や職人作業の積み重ねが、こういった場面で力になる事が多くあります。
日々鍛錬です。

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右隻/西王母
中国の神話上の女神。玉山または崑崙(こんろん)山に住む、人面・虎歯・豹尾の女神。
後に、神仙思想の発展とともに仙女化され、周の穆(ぼく)王が西に旅した時に瑶池で宴を開き漢の武帝に降臨して仙桃を与えた言われている。道教の成立後は東王父と一組の神格とされた。

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左隻/東方朔
中国(前漢)の文人で平原厭次(山東省)の人。字 (あざな) は曼倩 (まんせい) 。
武帝に仕えたが、巧みなユーモアと奇行により道化的存在だったという。西王母の桃を盗んで食べ長寿を得たという伝説がある。
 
桃は、仙果といわれ不老長寿をもたらす。東方朔は、西王母という仙人の仙桃を盗んで食べ、仙術を得て、800歳の長寿を得たという。古来めでたい主題として、この屏風の様に西王母と対にして描かれることがしばしばある。

修繕作業② (1)
修繕風景




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昨日今日で、大小合わせて14点の裏打ちをしました。

肌裏・増裏など数層の和紙が打ち付けてあり、現在はゆっくりと乾燥させているところです。

これを軸装・額装に仕立てます。

裏打ちは、手先だけでなく全身で行う作業なので心身共にとても疲れます。
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雲母が持つ独特の光沢感が美しい五七の桐の唐紙
意匠性の高いフォルムの赤銅月文字の引手

普遍的なデザインは、決して色褪せることはありません
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作/中村淳子
絵/やすらぎ地蔵

シワやヨレ、破れや欠損も裏打ちを施すことで作品(本紙)の状態を改善することができます。
また、裏打ちには作品を長期に亘り良好に保存する機能が備わっています。
表具(軸装・額装・屏風)には、それが高次元に施されているのです。
形に残さずとも裏打ちを施すだけでも作品の未来は確実に相違してきます。
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先日、愛知県名古屋市の中学校で半日ではありますが『ものづくり』をテーマに授業をしてきました。

全てが初めてのことで、不安とワクワクが入り混じる中での『挑戦』でした。
対象の生徒さんは、21名の中学一年生。

僕は、表具師という世間に馴染みのない仕事をしているので普通の職種と比べると、よりハードルは高くなります。製作を体験してもらいながら、表具の構造や機能をどうやったら子供たちに楽しく理解してもらえるのだろうか、資料作りも含めてとても悩みました。

表具師は、マイナーな仕事故に道具や材料・教材も揃っていないのが現実です。だから、無いものは自分で何とかする『工夫する』ことが常なのです。

その意味で、授業のテーマは『少ない情報の中から想像(創造)し、手を動かしてみる』にしました。
現代では、情報はどこにでもあり多様化しています。良い事かもしれませんが、本質を見極める力がないと薄っぺらな人になりがちです。何かを成し遂げていくためには、物事を深堀りしていくことが重要です。

そこで、表具の基礎である『和紙・糊・裏打ち・下地』を手を巧みに使いながら知ってもらうために、小さな障子の様なモノを一から製作してもらいました。プロダクトとしては、チープな見た目なので些か恐縮ではありましたが、構造を理解するための『ものづくり』に焦点を絞りました。

にも関わらず、生徒の皆さんは意欲的に色々考えながら、そして理解しながら丁寧に手を動かし製作してくれました。凄く嬉しい、こんな気持ちになれたのは初めてでした。

月並みな言葉になってしまいますが、生徒に教えるつもりが自分が教わる授業になっていました。
後日、21名の生徒さんからお礼のお手紙まで頂き、感無量です。

正に表具師冥利につきる体験となりました。

最後にこのような場を設けてくださった、中学校・運営をしてくださった方・そして生徒の皆さん、ありがとうございました。
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※写真撮影時のみマスクを外しています




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穏やかな海
晴れ渡る空

この和紙には様々な表情があり、つくる人・つかう人の創造力を掻き立たせてくれます。

ご依頼主所有のこの和紙をどの様に仕立てていくか、どうぞお楽しみに。
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年内最後の軸装の仕上げに掛かりました。
これから、軸棒・八双・紐を取り付け検品も兼ねて細部の施しを丁寧にチェックしていきます。

良い出来になりそうです。

軸装の仕事を終えれば、額装の仕上げを残すのみとなります。

ようやく出口が見えてまいりました。




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表装裂地として初めて使用する布です。

調べてみると、インドを代表するシルクで日本や中国の代表的な繭と比べると大きく、野生味に溢れておりタッサー種は森の中で育ち、その多くは蛾が飛び立った後に採取される(家蚕のように身がある状態で煮沸して糸取りをしない)ことから、アヒンサー(不殺生)シルクと呼ばれているそうです。

その野生味故なのか肌裏打ちにかなり苦戦しましたが、布の特性を知ることで対処する術を学ぶことができました。

試行錯誤から得るものは作り手にとって褒美です。520F86EB-7DA6-46D3-914D-CF85E29F5534




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ガラス戸だったところを茶室で用いられる太鼓張り襖(坊主襖)で納めました。
以前のガラス戸は、非常に重く建て付けも悪いことから開け閉めが大変で施主様にとってかなりストレスなものでした。

透かし襖は、自然光を障子の様に柔らかく取り入れるだけでなく通常の建具と比べ、とても軽く扱い易いのが特徴です。

シンプルで洗練された普遍的なデザインのこの襖は、空間に簡素な美を演出してくれます。




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本紙(作品)は、既存の情報のみで構成されていることが理想です。

ヨーロッパの修復の様に当時の作品を復元することが目的ではありません。

故に作業は、難航します。

作品を残すこと(修繕)は、当時の情報を正しく伝えることでもあるのです。

それが結果として、歴史資料にもなり得るからです。

その意味で、下支えとして最低限の色を補う作業が補彩です。




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本紙(作品)を修繕し、
額の下地を作製し、
下地に和紙や裂地で化粧を施し、
本紙を張り込み、

そして、最後に額縁を本体に取り付けていきます。本体・本紙に粗相がないよう進めていく作業に失敗は許されません。

やり直しの効かない『留め』の工程は、緊張しないことが一番です。D68C3B18-565F-4E53-AEE1-18E93C77CCEBE137AE2F-774D-4898-9E4F-C63EC2187826




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巻子の見返しに使用する金砂子紙は、自ら金砂子を和紙に撒いています。
砂子の割合や形は様々あると思いますが、僕は本金箔と中金箔を敢えて混ぜて作っています。

いつまでも輝き続ける本金の中に、色褪せていく中金の経年変化を愉しんで頂きたいという面白みを含ませています。

いずれ、金金砂子が金銀砂子の様な味わいになれば良いなと。
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坊主襖とも呼びます。
障子ではありません。

日が落ち作業を終え、工房の照明を消すと現れる日常の風景。

和紙がもたらす温かな灯り。

贅沢な眺めです。




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つゆいと。
風帯の端に施す装飾です。

絹の艶やかな質感が良いのですが、フワフワしているので指先のコンディションが悪いと扱いづらい糸です。

これからの季節は、手の保湿が欠かせません。
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表具師のあるべき姿。

月日荘さんで展示されている13組の作家さんの素晴らしい「短冊」の数々を拝見し、掛軸を表装することの本質を改めて教えて頂くことが出来ました。

創造すること
想像すること

この二つの違いを理解しつつ、バランスを絶妙にとっていく作業こそが表具師の仕事であると思うのです。

「短冊」
9月18日(土) - 26日(日)
11:00 - 19:00
※ご予約制です

月日荘
愛知県名古屋市瑞穂区松月町4-9-2

 【13組の作家さん】
浅岡千里
朝倉世界一
内田剛一
華雪
新保慶太
新保美沙子
中神敬子
中澤希水
ハタノワタル
三原佳子
山口信博
山田英幸
湯浅景子 
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屏風に施す「受け張り」と言う作業に使用する和紙を刃物ではなく、手で食い裂いた断面です。数枚重なった和紙の毛羽立ち具合が実に気持ち良い。

この食い裂き部分を利用することで精度の高い屏風へと仕上がります。

ちなみに和紙は手漉きの5匁。
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修繕作業前に行う事。

・ご依頼主との打ち合わせ
・検査と写真撮影
・修繕プラン計画
・作品表面のチリ落とし等
・剥落止め

その他、作品の状態によって必要なことは全て備えます。




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今週中に仕上げる掛軸の軸先。

軸先は、ファッションに例えると靴に近いと思う。

だから選定はとても悩みます。
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掛軸の本紙(作品)です。
状態は甚だしく、今にも壊れてしまいそうです。

この写真は、修繕準備が整えられたところですが、実はここに至るまでがとても重要なのです。

修繕作業は不安の連続で、その不安材料を一つ一つ消していくには、最高の準備が不可欠です。

いざっ。
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